「毒なんか……盛りやがって」

他人(ひと)がいくら死んでもいいけど、自分が死ぬのは嫌だよね」

 ただ、それだけ。寄せ集めの集団に、情なんて無いよね。金で誰でも殺せるんだから。

「助けてくれ。頼む」

 以前なら闘っていたであろう男は自らの老いには勝てず、軽薄な青年にさえも力なくひざまづいて必死に命乞いをした。

 トラッドはそれに口の端を吊り上げる。

「そうだね。僕を殺せば、またしばらくは逃げられるかもしれないよ」

 すぐに殺すはずだったけど気が変わった。

「きさま」

 殺しを楽しんでいるのか。かつての俺のように──見逃す気はないんだな。

 男はゆっくりと右手を腰の後ろに回し、取り出した折りたたみナイフを起こして一気に突きだした。