二時間ほどが経過してハロルドが戻ってきた。

「大丈夫?」

 思っていたよりも体力あるねと思いつつ、場所を父に譲る。

「うむ」

 ハロルドは気を取り直しベリルを見つめた。

「わたしが死ぬことを願っているのだろうが、そう簡単に君の望みは果たされない」

「それほど高望みはしない方でね」

 案外とフランクなんだ。トラッドはベリルの返しに意外な一面を見た気がした。

 けれど、彼は仲間からも慕われている。それを思えば、柔軟な対応や親しみやすい態度、交渉が上手いのかもしれない。

「君がそう望もうとも、わたしには同志が大勢いる」

 わたしの意志は継続されていくのだよ。決して途絶えることはない。君はいつしか世界の指導者として、ここから旅立つのだ。

 ハロルドは描いた未来を思い浮かべて恍惚としたが、それを見るベリルの目は冷ややかだった。