ケータイ小説 野いちご

あやつりの糸

「いいだろう。ここで、じっくり考えるといい」

 君は、自分自身に嘘を吐いている事に気付くべきだ。

 そう言い残し、部屋から出て行くハロルドをトラッドが追いかける。ハロルドは隣で歩く息子を一瞥し、溜め息を吐きつつ、やや残念な表情を浮かべた。

「あれほどの怒りを見せるとは、まだまだ若いという事か」

 感情を制御出来なければ真の支配者たり得ない。これからじっくり教育しなければと嘆くように頭を振る父にトラッドは立ち止まる。

「そうかな」

 口の中でつぶやいた。

 彼の怒りは、あんなものではないんじゃないだろうか。そう、あれはパフォーマンスで、父に怒っていることを表現しただけのように思う。

 本当は、彼の胸の中では怒りが煮えたぎっていて、それとは逆にその表情は絶対零度の如き冷たさで父を見つめている。

 彼にとって、施設にいた人たちは家族同然だったろう。それが、たった一夜にして蹂躙され「家」を奪われた。

 その怒りは、父さんが思っているよりも、ずっと強いんじゃないかな。

 だって──

「目だけが、なんの感情も表していなかった」

 ぞっとするほど綺麗で、怖い瞳だった。




†††

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