ケータイ小説 野いちご

あやつりの糸

◆序章
1.記憶の底

  
 オープン・カフェの白いテーブルセットが、街ゆく疲れた人々の足を止める。しかし、ほとんどはそのまま目的に向かって歩き始め、席に着く者はごく僅かだ。

 品良く作られたチェアに腰掛ける一人の青年は、アメリカのフロリダ州にある小さな街の一角でカフェ・ラテを傾けていた。

 アメリカ合衆国の南東部にあり、気候は比較的温暖で北はジョージア州とアラバマ州に接している。

 彼の名はベリル・レジデントと言い、傭兵という異色の職業に就いている。

 金髪のショートヘアにエメラルドを思わせる緑の瞳、外見は二十五歳ほどと見受けられる。カップを傾けている仕草は気品すら漂わせ、フリーランスの傭兵だと信じる者はいないだろう。

 ──彼が不老不死という存在になって十年になる。二十五歳で不死となり、三十五歳となった今でも外見は変わらない。

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