はぁ…ビックリしたぁ……





まだドキドキうるさい心臓の音を聞きながら、あたしはやっと部屋の電気を点けた。









−−-………さっき、すぐ真上にある耀太の口から、おもむろに、「この匂い…」と呟く声がした後、





あたしは混乱した頭でなんとか『何の?』と尋ねようとしたんだけど……






言うより早く、





「楓〜!ようちゃ〜ん!
お寿司来たわよ〜!」






と、場の雰囲気を一蹴するような母親の呼ぶ声がして、お互いびくっと体を震わせた。
その後、我に返ったように1m近く後ろに飛びのいた耀太。






「……さ、先に行ってるぞ」






それだけ言い残して、まだ呆然としてるあたしを置いて、足早に部屋を出て行ってしまった。






残されたあたしはというと、






匂いって、なに………?



まさか、汗臭かったとか………?






ぼんやりしながらも、まだよく動かない自分の体を駆使して、くまなく全身の匂いチェックをした。






………なによ、柔軟剤の匂いしかしないじゃない……





香水を付ける習性のないあたしは、いつもと変わらない柔軟剤の匂いにほっと安堵しつつ。




でもやっぱり、上手く頭が回っていなかったらしくて。






多分、30秒くらい、その場から動けなかった。






脳裏に焼き付いて離れない耀太の息遣いや、鼓動の音、匂い、その他諸々……






そのどれもがあたしの知ってる耀太の記憶とは違っていたから。







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