今日はいつもより長い時間をカラオケ屋で過ごしたから、家にたどり着いた頃にはへとへとだった。





2、3段の玄関前の階段でさえ、上がるのが面倒なくらい。



どんだけあたしと瑞穂がカラオケで熱唱するか、これでバレちゃった?
歌うだけじゃなく、もちろん激しい振り付き。
安室ちゃんを心の師匠としている瑞穂にしたら、それが当たり前なんだとか。





「……う゛っ…、腰いたい……」





現役女子高生とは思えないセリフを吐きながら、玄関のドアを開けると、再び違和感を感じた。





足元には見慣れない黒い男物の皮靴。
リビングからはぼそぼそとした話し声。






このパターンは……






多分、父親の会社の人だろうと予想して、失礼のないよう下駄箱の姿見で軽く身だしなみチェックをする。





耀太以外でも、たまにこうして父親が会社の部下とかを連れてくるんだ。





おかげであたしは、いいお嬢さんをお持ちですね?と父親の株を上げるため、こうして多少なりとも気を遣う賢い娘へと成長した。






リビングのドアをいつもより静かに開け、そのお客さんの背中を確認すると、






「はじめまして。娘の楓です」






ぺこりと頭を下げた。






今日も完璧だ。
これで最後に笑顔を向ければ、商社マンの娘として十分な役割を果たしたことになる。





そう思って極めつけの笑顔を浮かべて顔を上げようとした時、






「ああ、そんなこと大昔から知ってるけど……?」





と、明らかに笑いを含んだ声がソファーから聞こえた。







………ま、まさかこの声…






げ〜〜〜〜〜!?
耀太じゃんかぁぁあ!!






あたしの視線の先には、いつも座る反対側のソファーに座るスーツ姿の耀太が居た。







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