満開だった桜が葉桜へと姿を変えようとする頃、とうとう高校生活最後の年が始まった。





自転車を車庫から出しながら、ふと前の道路に目をやると、見るからに真新しい車が静かに横切って行く。






………あっ…耀太…






と思った時には、すでに車は4差路を曲がろうとウィンカーを点滅させて進路確認をしているところだった。






そっか……、耀太も今日から本格的に先生か……






ちらっと見えた耀太は、見慣れないグレーのスーツに身を包んでいた。






あんなに気合い入れちゃって……



どうせ工業高校なんて男子ばっかりなのに……



それとも、同僚の先生に誰か素敵な人でも見つけた……?






そう思ったら、少しだけ胸がズキッと痛んだ。






………って、あたしにはま〜ったく関係ない話だけどさ。






せいぜいヤンキー達にナメられないように頑張ってね〜!






あたしは、滑らかに右折して行く真っ黒の車に、胸の痛みをごまかすように、ニヤニヤしながらエールを送った。







気にしない、気にしない……







「さてっ、あたしも行きますか……」







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