その言葉を聞いた途端、キョウスケはまた金縛りになったかのように、体を硬直させた。                               

「あまり緊張しないで。タバコでも吸ったら?」                          

 そう言ってセンセイはテーブルの隅にあった灰皿をキョウスケの前に移動させた。                                  

 キョウスケが緊張状態になったのは、センセイに恐怖を抱いているだけではなかった。                                

 死の恐怖。                              

 ここに来てからセンセイの口から、キョウスケの命を保障したような言動が見られないことが、一番キョウスケを緊張状態に陥らせていた。                                

「はい・・すみません。でもタバコはジャケットにありまして・・・」                            
「あっ、ごめん。内ポケットにあるのかな?」