記憶にある限り、
他人と暮らしたことのない俺が、

今は彼女の手を握り締め、
同棲を迫っている。

同棲…?
否、同居だ。

「でも…そんなにご迷惑は掛けられませんから」

本当は頼りたいのだろうに、
気丈に振る舞おうとする彼女が
健気で…

「帰りたくなるまで、
ホテル代わりにすればいいよ」

連れて帰りたかった。

此処で手放したら、
二度と手に入らない気がして…。

金ならあった。
金だけならいつもあった。
欲しいものは何でも手にしてた。

愛情が貰えなかった分、
愛情に飢えてた。

産まれた愚行にも育った環境にも
負けない様に、
愛を知らないヤツにだけは
なりたくなかったんだ…。

自分が欲しいと思ったものには、徹底して執着した。