ルシは深々と溜め息をついた。
心なしか、顔が引きつっている。

「な、なぁ。もう一度聞くが、今日のおやつはなんだ?」

左手に煮干しのパックを持った自身は答えた。

「だから…煮干しです。しかも贅沢に瀬戸内産!」

一匹つまみ出し、ルシの鼻先に突き出す。

「ほぅら、美味しいですよ、ルシ」

ルシはプィと顔を背けた。
そのまま部屋を出て、人型で戻って来た。
黒いTシャツと、濃いカーキの細身のズボンが良く似合う。

自身の教育の賜物か、ルシは最近ようやく真っ裸で歩き回るのと、自身の目の前で着替えをするのを止めた。

「俺は。おやつにはケーキが食べたい。クレープでも良い。生クリームかチョコクリームの、脂肪がたっぷりのやつだ。」

「太りますよ?」

「望む所だ。むしろ太れば良い」

「念の為言って置きますが、自身はたべませんよ」

チッ。ルシが舌打ちした。

最近ルシは、事ある毎に自身を太らせようとしている節がある。
何を企んでいるのだろうか…。

そもそも自身は、どうせ甘い物を食べるなら、キンツバや芋羊羹、大福など和菓子の方が好きだ。
洋菓子は少し、クドくて苦手なのだ。