翌日、いつもより早く学校に来てみれば、廊下で携帯をいじっていた沙雪がこちらに気付き、駆け寄ってくる。



「奈々、ちょっと聞いてよー。
あたし今日の占いでさ、沼にはまるから注意とか、どんな生活したら良いのかわかんないんだけどー。」


どうしてこう、この子は朝から元気でいられるのだろう。


昨日のこともあってテンションの低いあたしにも気付かず、沙雪はさらに言う。



「やー、ラッキーアイテムが包丁でさぁ。
そんなの持ち歩いてたら普通にヤバくない?」


「…あぁ、そうだね。」


そう言いながら、あたしは曖昧に笑った。


すると、急に向こうを見た彼女は、あたしの服を引っ張ってくれる。


何事なのかと思って入れば、こちらに歩いて来るふたり組の姿。



「おはよ。」


勇介と、その友達だ。


あたしの代わりにおはよう、と返したのは目を輝かせた沙雪で、勇介はわかっているのだろう、苦笑い。


彼の隣には、赤っぽいブラウンに染めた少し長めの髪の、見た感じチャラそうな男が立つ。


これが大地ってヤツだろうけど。



「友達?」


彼は首を傾げた。


まぁね、と勇介が返すのと被るくらいの早さで、沙雪がはじめましてー、なんて言う。



「こっちが奈々で、隣がさゆちゃん。」


「へぇ、よろしく。」


大地くんは社交的な笑顔だった。


やっぱり勇介の友達だけあって軽薄そうで、目つきが好きにはなれない感じ。


沙雪はあたしの横で、きゃぴきゃぴと嬉しそうにしているから、まぁ良いけれど。