あれからも、あたしは密かに勇介の観察を続けていた。


会ってもやっぱり互いに会話らしい会話なんかしないけど、どうしても目で追っている自分がいる。


と、いうか、ヒロトのグループ並に目立つやつらなのに、何故あたしは今まで、その存在に気付かなかったのか。



「ねぇ、愛って何だと思う?」


聞いた瞬間、樹里は目を丸くした。


そして、「どしたの、急に?」なんて言いながら、あたしの顔を覗き込んで来る。


あの日の勇介のことが気掛かりではないと言えば嘘になるけど、でも、いつもその疑問が付き纏う。


まぁ、責めるでもなくママの所為だとは思うけど。



「人って付き合ったら、すぐ愛してる、って言うじゃん?」


「じゃあ何で別れるのか、って?」


さすがは樹里。


彼女はこれで結構賢くて、そして鋭いのだ。


例えばチュッパはどれだけ食べても飽きないのに、恋愛関係はそうではないから。



「それってつまり、アンタ誰のことも心から愛してないんだよ。」


手厳しいな、と思わず苦笑いを浮かべてしまう。


なのに樹里は頬杖をつき、ため息を混じらせた。



「樹里、どしたの?」


「んー、ちょっと色々考えることあってさ。」


「カレシのこと?」


聞いたけど、彼女は何も答えない。


上手く行ってないのかな、と感じた疑問は胸の中に留めておいた。