進学のために東京へ出てきて二年少し経った、大学三年の夏休み。

 俺は今年こそ彼女をゲットして遊び回ろうと意気込んでいたが、叶わぬ夢に打ちひしがれていた。

 迫戸良平(さこと りょうへい)二十一歳。

 俺のカタい性格がアダとなって、悩みは「彼女いない歴イコール年齢」であること。

 別にブサイクではないと思う。

 身なりにだって気を使っているし。

 ただ、

「本命意外とは付き合わない」

「人の女に手を出さない」

「自分の女以外は抱かない」

 というポリシーが災いして、結局彼女いない歴二十一年。

 結果、二十一歳にしてチェリーボーイである。



 そんな暗い夏休みが始まって三日ほど経った日。

 八月は十日過ぎの月曜日だった。

 バイトもないからと昼寝に勤しんでいたが、けたたましく鳴る携帯の音楽で目を覚ます。

 ディスプレイには懐かしい名前が表示されていた。

「佐原 真紀(さはら まき)」

 高校時代、同じクラスだった女友達だ。

 彼女も進学で東京に来ており、今でもたまに会っている。

 俺はまだ半分夢の中で通話ボタンを押した。