「名は」

「……ノイン・ツバクラ」

 一定の間合いを保ちつつ、睨み合う。

 こいつ、強い……ノインはゾクゾクしていた。

 幼くして戦いの技術をたたき込まれた彼女にとって、闘う相手が強ければ強いほど自分の中に眠る狂喜がうごめく。

 親の顔なんか知らない──兵士として戦い、その力を認められていつの間にか暗殺者として生きていた。

 大学に行きたくて、その世界から足を洗ったのはいいけれど、普通の生活にお金がかかるとは思わなかった。

 折角、入学金を払ったのに今までの貯金が底を突き、思案していた彼女にかつての上官がいい話を持ってきた。