「…腕のいい神経科医ではあったよ

彼は」

「そうですか…」

「薬学が得意だった…医者では珍し

いけどね」

彼は苦笑した

確かに

薬に付いては熟知していた

でなければあんな風に

人の意識レベルを操れない


青年医師は私の質問の答えを続けた

「経歴は良くは知らない院長は履歴

を持ってると思う…結婚はしてなか

ったな…実はあまりプライベートを

知らない…どのスタッフもだけど…

話さない先生だったしね」


結局担当医についての質問で

わかったことなどほとんどなかった

そういう意味では

私が一番彼を知っていた

ということになる

他人に尋ねるのはこれ以上は

無駄なことに思えた

「…しかし…彼がゲイで変態だった

とはね…」

彼は少し苦々しい口調で

そう言って長いため息をついた…



……

……?

ゲイ…?


それは

とても意外な

意外?

なんで?

…!



…ゲイだ

彼も私も男じゃないか



恐ろしいことに

私はその苦々しい発言を聞くまで

この一連の出来事が

男同士の変態的な性行為だ

ということに

まったく

気づいていなかったのだ



もっと恐ろしいことは

私が男に身体をなぶられている

そのことに

なんの違和感もなかったことだった



ただの一回も…