この辺りは太古の昔、『中国』という名の国があったそうだ。

何億何十億という人間が住み、文化を、文明を形成していたという。

この遺跡と化した寺院も、昔は人間達で賑わっていたのだろうか。

朽ち果て、ひび割れ、薄汚れ、今では無人の廃墟でしかないが。

その寺院の前で、俺は修練に精を出す。

…目の前に敵を仮想する。

巨大な爬虫類でも、凶暴な捕食動物でも、憎き『あの連中』でも、敵は誰でもいい。

とにかく、己より強い相手、己より手強い相手を想像し、拳を硬く握り締める。

「はぁっ!」

その拳を真っ直ぐに前へ。

空気を切り裂くような音を立てて、正拳突きを放った。