まるで真っ暗闇へと引きずり込まれたようで、不安が立ち込めてしまう。



背を向けている後藤社長の表情が、最上級に訝しげなモノだと想像がつくほど…。





「陰でコソコソと、嗅ぎ回っていた事には気づいていましたよ。

貴方が初めて本気を見せた、蘭を諦めきれていないとも・・・

そんな中で、ひとつの布石を見つけられたのですよね?」


震えてしまう身体を宥めるように、大きくて温かい手が私を引き寄せていて。



その手つきとは裏腹に、標的へと向ける声色はスナイパーそのもの…。




後藤社長が…、まだ私なんかを諦めていない…――?





「ソレが“遠藤 涼太”だと、言いたいようだな?」



え・・・?


どこか観念したような声が届き、ドクッと大きく脈打つ私の鼓動。




「ご明瞭・・・

貴方は新人銀行員の彼に、色々とプレスを掛けたようですね」


「…立場を解っていての発言だろうな?」


「…仰いで天に愧じず(はじず)――

何でしたら、すべての発言を録音頂いても構いませんが?」


「ッ・・・」


拓海が淡々と述べる数々のモノに、疑問符ばかりが募ってしまう。







※仰いで天に愧じず…心にやましい事が無く、潔白である事。