ケータイ小説 野いちご

冒険物語

◆第一章 リコシェ
鳴動




風車の丘を抜け、何度目かの峠を越えた先に、目的の街は広がっていた。

「ここが……リコシェ」

今までのファイは、彼女にしか見えない地図を広げて独りで見ているしかなかった。

だけど、今は違う。

街の南に広がるアドレア海は、西に傾いた太陽の光を一杯に照らし、煉瓦色の街を優しい夕焼けが包み込んでいた。

街の真ん中にひときわ高い協会の時計塔が見える。そのすぐ横には、真綿のような蒸気を立ち上らせた列車。

夢の中ではぼやけて見えた街が、人々の暮らしの中で活気づいていた。

「夢じゃないよね」

「もちろん」

隣で瞳を輝かせるファイにニコリと頷き、タウはゆっくりと車を走らせた。


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