ケータイ小説 野いちご

冒険物語

◆第二章 カン・シティ
昼夢




「静かね」

ファイがタウの腰を掴んで言った。

静寂の中、低く唸るフローターのエンジン音だけが聞こえている。

「だね」

バックミラーで後ろを見ると、髪をなびかせたファイと、その膝の上で眠っているアクアの姿が見えた。

「今日は波も穏やかだ」

タウは頻繁に追跡者がいないかを確認しながら、慎重に夜のアドレア海をフローターで疾駆していた。

天候の良い昼間の海ならともかく、真夜中の運転は経験がない。

岩礁の位置は頭に入っている。けれど、楽観は禁物だった。

「今何時?」

「んー、十一時前」

「ちょうど二時間ってとこか。このまま行けば朝だね」

タウは頭の中で素早く計算した。


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