「いってきます」

「いってらっしゃい」

家を出る。

母親はやはり心配そうな顔をしていた。

しかしどこか嬉しそうだった。

朝ご飯を作っている母はとても嬉しそうな顔をしていた。

母親とはそういう生き物なのだろう。

俺は歩いた。

学校に一歩一歩近づけば近づくほど不安がつのる。

足もふらつくような感じがする。

でもここで負けてはいけない。

そしてもう大丈夫だ。

クボタが謝りにきた後、他のいじめっ子も謝りにきてくれたからだ。

俺は許した。

絶対に許せないと思っていたが、俺は許していたのだ。

勇気を出して学校へ向かう。

校門、階段、懐かしさを感じた。

別に周りの生徒たちは俺に気づく様子もない。

興味もないのだろう。

若干、何人かにジロジロ見られた気がしただけだ。

ここからが本番。

いよいよ教室に入る。

みんな、俺を見て、どんな顔をするのだろう。

脳裏に様々な感情が浮かんだが、入るしかない。

もう引き返せない。