リイエンはカツールという山奥の田舎街の更に奥に父と共に住んでいた。

母はリイエンを産んで数年後に亡くなったのだと聞いていた。

父は目を瞠るような美貌の持ち主で、豊かな金色の髪と瞳の持ち主だった。

細工職人であった父は香木と呼ばれる香りの良い木に刀で細工を施し、見事な装飾品や調度品を作って生計を立てていた。

彼女達の生活はなんとかその日の食にあり付ける、というような細々としたものだったが優しい父と共にいられることにリイエンは幸せを感じていた。

―――そう、あの日が来るまでは。