ボートは何事もなく海上を滑るように進む。

少しずつ遠ざかっていく孤島。

ついさっきまで、生きるか死ぬかの脱出劇をしていたのが、もう遠い昔の事のようだった。

「今更だが…怪我はないか、アシュリー」

レイがボートを操りながら言う。

相変わらずの無愛想。

だけど彼は彼なりに私に気を配り、常に私の身の安全を考えていてくれたらしい。

自分は胸をチェーンソーで切られ、腕をライフルで撃たれ、散々蹴りを入れられて傷だらけだというのに。

「帰ったら、一度自分の姿を鏡で見るといいわ。他人の心配している場合じゃないってわかるから」

無事に島を脱出できた安心からだろうか。

そんな冗談が自然と口から出た。