『きゃぁ、渡辺くんよ』
『今日もカッコイイね、彼』


そんな声を尻目に、僕はいつも大学の門をくぐる。


……今日はひどく暑いな。

      ワタナベシオン
僕の名前は、渡辺紫恩。


普通の男子大学生。


「よっ、紫恩。今日もクールに声援を無視ですか」

額の汗を軽く拭うと、肩に手が置かれた。

同級生の山本秀也。


僕の親友、だ。


「だ〜よなぁ、あんなに可愛い彼女がいちゃ、そうもなるよなぁ……」


今日はゼミの日。
秀也と会うのも久しぶりだ。