つくつく法師の声に混じって脂ぎった蝉の声が、夏も終わりだというのに未だ現役を主張している。

 しゃらんしゃらん。貝殻の飾りが立てる心地よい音と共に店内に入ると、外の熱気と蝉の声とが遠ざかる。

「いらっしゃいませ」

 愛想の良い笑顔で迎えた若い店員に、軍服の少年は首から下げたカードを突きつけた。

「店長はいますか? 悪いですが今から、この店を軍の権限で尋問のために使用させてもらいます」

 冷房の効いた海辺の喫茶店の中は、ひんやり空気が冷たい。

 尋問、という言葉に反応して、少年の後から店に入ったクウとウミは、小さく震えた。

「はあ、この店のマスターなら俺だけどね」
 どう見ても二十代にしか見えない青年は、そう言って三人の少年少女を眺めた。

 少年が軍服を着ていなければ──或いはその肩から軍用ライフルがぶら下がっていなければ──学生の友達三人組が、お茶とお喋りをしに立ち寄ったというところだろう。

「そうですか、住民コードと名前を」
「3J7SL1780000409、ナルキ・ウトリ、二十五歳、独身、趣味は──」
「成木雨鳥さん、ですか」
 何やら余計な自己紹介を始める若いマスターを遮って、軍服の少年はマスターが差し出したIDカードの名前を読んだ。