0600時にマイアミを出て、ニューヨークに着いたのは2200時だった。
相変わらず、マンハッタンの夜景は綺麗だ。この夜景作るのに、どれだけの電力を使ってるんだか。一晩分の電気代で、俺達3人が何日メシを食えるだろう。
なんて身も蓋もないこと言ってみたところで、興ざめするだけで現実は何も変わらない。ジャパンのコトワザに良いのがあった。働かざる者食うべからず。
待て待て。ってことは、働いたら食って良いってことじゃねえのか? そうだよな。そうに決まってる、うん。だったらなぜ俺達は、働いてんのに食えねえことがちょいちょいあるんだ? 納得できねえだろ、これ。同じだけ働いてんのに、たくさん食えるやつと少ししか食えねえやつがいる。神は不公平だ。ハワード・ヒューズやカーネギーやロックフェラーやジェフ・ベゾスやビル・ゲイツにばっかり食いもん与えて、俺達には少ししかくれねえ。
ま、俺は元々、神なんか信じちゃいねえんだがな。俺の好きなジャパニーズマンガで、誰かが言ってたぜ。『神に祈る前に自分にできることをやれ』ってな。全くその通りだ。
また激しく話が逸れちまったな。悪い。
ま、とにかくだ。俺達は延々16時間かけて、マンハッタンまでやってきた。船をマイアミに置いたまま飛行機で来ようかって話も出たんだが、バイクを持って来たかったし、何よりバラクーダを置き去りにはしたくなかった。
道中ずっと超電導推進で来たから、バッテリーが危なかった。今度からは、もう少し予定に余裕を持って仕事しよう。せっかく組織に縛られない商売に鞍替えしたんだから、もっとゆとりを持った生活をするべきだ。生き急ぐもんじゃねえ。
「喉かわいた」
船下りた途端にこれだ。このガキは。頭の中は、コスプレと飲食のことしかねえのか。
けどまあ――
「そうだな。船ぶっとばしてきて疲れたし。今日のところは、そこらの店で情報収集がてら一杯飲んで、本格的な捜査は明日からにしよう」
「だな」
「ならあたし、前から行ってみたかった店あるんだけどー」
本気でガキみたいにはしゃいでやがる。観光旅行じゃねえんだぞ。
「どこだよ?」
尋ねる俺に、
「ここ、ここ」
あかりは一枚のパンフレットを見せた。
 
「うわーガチで本物だし♪ こんな近くでガン見できるなんて、ありえなくね? マジアゲアゲ」