杏樹が飛び込むと


すぐに穴は消えて無くなった。





「……杏…っ…」


陸は拳を握り、俯いた。






「……君は………滝本財閥のとこの息子さんかのぅ…?」




ゆっくりと、杏樹の祖父が近付いて来た。




顔を上げる陸。




「……はい。」



「…そうか……滝本財閥のご子息……杏樹も、時期が来たのかのぅ…」




「………えっ……?」





手を顔に当て、唸る祖父。


「…どうかされましたか?」



不思議な陸は尋ねる。




「…いや……私どもの家のことです。お気になさるな。」



人当たりの良い笑みを浮かべ、答えた。







「ここの空気は、少し濁っておるのぅ…」



そういうと、祖父は口の中で、何か呪文を唱えた。