―瑞樹side―



電車は最寄りの駅に着いた。


朝の通勤ラッシュ。


電車の中は息が詰まりそうだった。


電車を降りて深呼吸をする。


人の波に紛れながら改札に向かった。


改札付近は多くの人でごった返している。


サラリーマン、OL、学生。


いろんな人が行き交っている。


俺の横を制服を着た1人の女の子が通り過ぎた。


その時、女の子のスカートのポケットからハンカチが落ちた。


たぶん、定期を取り出すときに落ちたんだろう。


彼女は気付かずスタスタ歩いて行く。


ハンカチを拾った。


きちんとアイロンがかけられている薄いブルーのハンカチ。



「ねぇ!待って!」



俺は後ろから彼女に声をかけた。