「葉月ー!」

後ろから呼び止められて振り向く。彩己がひらひらと手を振りながら自転車で近付いてきた。キィと軋んだ音を立てながら自転車は葉月の横に止まる。

「どこか行ってたの?」
「夕御飯の買い物よ。ねえ後ろに載せて頂戴な。」

荷台に腰掛けて彩己の細い腰に片腕を回す。今まであまり気づかなかったが、彩己の身体は華奢な中にも男らしい筋肉を纏っていた。意識すると何故か心臓が跳ね、やっぱり下りると言おうとしたら、自転車は既に走り出していた。

「葉月、思ったより軽いね。」
「女の子だもの。」
「うん、今年になって急に女らしくなったね。」
「え?」

うまく聞き取れなかった。彩己は鼻歌など歌いながら、上機嫌で畦道を進む。

「ねえ葉月、寄り道していい?」