ひ、ひぇぇぇっ・・・・!!


西日が差し込む教室。

廊下を歩く人は誰もいない。

少し開いた窓からは春の風が優しく吹き込み、クリーム色のカーテンをはらはらと揺らす。


そんな中、あたしは目の前にいる大嫌いな人に黒板まで追い詰められ・・・・ぴとっ。

うそぉ〜。

とうとう、ひんやり冷たい黒板があたしの背中を定規みたいにピンとさせた。


あたし・江田茜。15歳。

人生それほど生きていないのに、ただ今“人生最大のピンチ”を迎えています。





「コレ、返してほしいんだよね? だったら俺の言うこと聞いたほうが身のためだと思うけど?」


顔と顔との距離わずか1センチ。

あたしの弱みを握るその人は、端正な顔立ちを悪魔のごとくニタァとさせて“コレ”をブラブラと揺らす。


「・・・・だ、誰が!誰が先生の言うことなんて聞きますかっ!!」


あたしは負けじと吠える。

だって、だって、だってぇーー!!


「ふ〜ん。じゃあ、もらっちゃおうかなぁ。ちょうど新しいのがほしかったんだよね〜」