天の森であるはずなのに。
そこは暗い影を落としていた。

所々、木々の隙間を縫うように光が差し込んではいる。
けれど、光はそこに満ちることはない。


ひんやりと冷たい風が頬をなでる。
木々たちはざわめきながら、怒りの視線を投げかける。


声なき声は叫びにも近く、つんざく悲鳴にも似た声に思わず顔が苦くなる。



「歓迎されなさすぎだのぉ……天使を嫌っておる」


そう言いながら、ジジィは困ったように顎に手をあてたままこちらを見た。


『天使』を『嫌っている』のではなく。

おそらく『ガブリエル』に『近い者』を『嫌っている』のだと思われる。



「それだけかしらね、本当に……」


隣に並び立って歩いているマリアがちらりとこちらを見た。


なんだ、その目は。
自分に非があるとでも言うのか?

まったく身に覚えがないのだ。
ここに来ることも滅多にないのだ。

絶対にガブリエルが原因だ!!


「まぁ……御本人に会えば、それも分かるかしらね」


ふぃっと顔をそむけ、マリアはぽつりとこぼした。


そんなマリアと自分を、先頭を行くジジィが苦笑交じりに見つめていた。


「なにがおかしい?」

「いんや、別に……」