「お兄さん、今仕事何されてるんですか?」

今までの表情から腹黒さがプンプンただよっている人間とは違う、純粋そうなオドオドした若いイケメンの男が声をかけてきた。

たぶん同じ年ぐらいだ。

緊張しているようにも見えた。

この人間なら安心できると思った。

刑務所で人間を見抜く目は養ったつもりだった。

「何もしてなくて。仕事探してるんです」

俺は立ち止まって正直に答える。

「マジですか。だったらいい仕事ありますよ。お兄さんぐらいイケメンだったら稼げますよ」

イケメン・・・。

たしかに俺はモテモテではなかったが、小さい頃から見た目や容姿をほめられることが多かった。

「いやーイケメンじゃないですよ。でもいい稼げるんですか?」

俺は謙遜しつつ聞く。

「もち稼げますよ。ホストっすよ。ホスト」

若いイケメンは笑顔でそう言った。

ホスト・・・。

この名前に俺は拒否反応を起こした。

ラブラブだった俺とナオの愛を引き裂いた存在。

ナオが俺よりも魅力的だと言って、金銭を貢いでいた存在。

「女とエッチやりまくりで、金も稼げる。最高ですよ」

若いイケメンは夢のような話を言う。

俺はホストという存在を憎みつつも、憧れていた。

ナオをそこまで魅了した存在。

その未知のホストの世界を見てみたい。

そう強く思った。