「ちょっと!ちょっと待って!」

「うるさい!お前は裏切ったんだ!」

「ほんとに悪いことしたと思ってる。許して・・」

「許せるもんか!なんで俺じゃダメなんだ!」

「だって・・・。ごめんなさい」

「ふざけるな!うわあああああ!!」

「きゃあああああああああああ!!」

その時の俺の心は、怒り、悲しみ、憎しみ、人間のマイナスの感情があふれていた。

目の前には血だらけの倒れたナオの死体。

俺が殺した。

ナオは裏切ったんだ。

必死に俺は自己を肯定する。

そうだ。俺は正しいことをやったんだ。

俺は間違っていない。

俺と付き合っているのにもかかわらず、ナオは隠れて男と同棲していた。

しかもその男はホストだった。

ナオが最近金に困っていたのもホストに貢いでいたせいだった。

普通の大学生のナオはホストクラブに通う金などなかった。

「母親が倒れて仕送り減っちゃってきついんだ」

そうナオに言われて俺は金をあげていた。

高校生の純粋な俺は何も疑わなかった。

ナオが困っているのを助けようとしてバイトもしたし、貯金も全額下ろしたし、家にある親の金を盗んだりもした。

真実を知って俺は気が狂いそうになった。

ナオを問いただした。

「だってリュージよりあの人が好きだから・・」

ナオはうつむいてそう言った。

俺の何かが崩れた。

憎悪が俺を異常な精神状態にさせた。

何もかもどうでもよくなった。

ただ許せなかった。

そしてナオを殺していた。

包丁を握っていた手は震え、俺は返り血にまみれていた。

不思議と人を殺した罪悪感はない。

俺は無心でナオの髪の毛を掴み、首を切り取る。

残酷なことをしているのに快感すら感じていた。

とにかく人間が持つ通常の心理の一線を超えてしまっていたのだ。

俺はナオの生首をカバンに入れ、それを持って警察署に自首をした。

俺は逮捕された。

世間を恐怖で震え上がらせる凶悪犯罪。

その日から俺は消えない十字架を背負うことになった。