ポタポタ…と
水が滴(したた)る雨音が心地いい位に響く部屋で
いつもは、目覚ましが鳴らないと起きない俺も
珍しくソレが鳴る前に目が覚めた。
最近やたらと雨が多い気がする…
『はぁー…』
重い体を起こして、寝起き早々…目覚めの一服
━━俺
坂本 光。
年は…気付いたら
もう、結構いい年。
会社に行って、夜はBARのバイトに行って
深夜3時に帰って来て眠りにつく…
何もなく、同じ事を繰り返して行くだけの毎日。
あんなに欲しかった“平凡”が、
まさに、今ここにあるって言うのに…
辛かった過去でさえも
“あの時の方が良かった”
なんて思うのは、自分でも気付いてなかっただけで
ほんとは幸せだったからかもしれない。
人間は、何て欲張りな生き物なんだろう?
何気なくテレビの電源を入れると…窓の外の空とは裏腹に、可愛らしいレインコートを着た陽気なお姉さんが今日の天気予報をしていて
ボーっと…付いているだけでBGMと化したテレビを眺めて、ふと…思い返す。
『空……』
タバコの煙と共に、切ない名前が
口から零れた……。
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