捌

 車掌はドアから外を覗く。
 女の子はもういない。
「いえ、誰もいませんよ」
 車掌は外を見るのをやめ、僕を見る。
「それにしても、いくら平日だとは言え、始発からここまで乗客が君一人だって言うのは本当に参るよ。乗って来る客もいなければ、降りる客も無しか。もうすぐ終点だというのになあ」
 こうして今日もまた、一つの想いがこの世界から消えて行く。
「大変ですね」
「まったくだよ。それにしても、君はずっと一人だったが、寂しくないのか?」
 僕は笑顔で答える。
「ええ、慣れていますから」