いつもの慣れた古い木の橋に差し掛かった時、私はちょうど橋の向こうに、艶めかしい着物姿の女が橋の欄干にもたれて、太股も露に男を誘うように裾を割り、立っているのが見えた。

時刻が夜で視界の悪いにもかかわらず、その女の白い肌と太股は妙にはっきりと暗闇に浮かんでいた。

気にせずに渡っている時、ちょうど女の横で横目に女を見た時、女が話しかけてきた。

「油取り紙をお持ちでないかい?」

私には、その女がこの世と言うか、現代に生きている人間でないことはひと目見た時からわかった。