~ 力になる感情 ~

 「動物には無い、人のみに備わる力」と訊かれたら、アナタは何と答えるだろう。
 そんな問いから、この物語を始めたい。


 もしアナタが『頭の良さ』と思ったなら、それはいささか軽率かもしれない。なぜならそれは“能力の差”であって、“有無の差”ではないからだ。

 
 「そうか、では『心や感情』だろうか?」

 ……いや、それも、たぶん否。
 犬にだって感情はある。象は仲間の死に涙したりもするらしい。

 
 「では何だろう?」

 …………
 ………

 ……いや、こんな閑話をするのには理由がある。
 そもそも、これから始めるのは古典的(?)な子供向けの『魔法使いの美少女戦士』の話である。が、それでも私は、その『魔力』の根源について考えておきたい、と思ったのだ。まがりなりにも現実的な解釈をしておきたかった。
 
 確かに、美少女戦士に現実的解釈―――というのも奇妙なものだ。
 けれど、「不思議な魔法で万事解決」……では、現実世界を生きる子供達(あるいは大人達)への“何の励ましにもならない”と思えた。
 現実世界は『魔法のステッキを振ってればいい』……ワケではないからだ。

 そう、現実はきびしい。

 そこで私は、『魔力』の根源を人間の本質に求めた。現実世界に住む我々も持っている真の力にだ。
 

 ……そして最初の問いに戻る。
 
 「人間のみに備わる力とは何か?」それがイコール、この物語での美少女戦士の『魔力』となる筈である。

 そして、私はその問いに一つの答えを見つけ出した。
 
 人間の真の力、それは…
 『感情を現実に投影する力』だろう、と。