――…あぁ、いやだ。 またあの日の光景が蘇る。 窓枠に手を付き、隣のビルを眺めていた麻紀は、ふうーっと小さく溜め息を漏らした。 昼間だというのに厚い雲に覆われた今日の空は、どんよりとしていて今にも雨が降り出しそうだ。 天気予報を信じて、傘を持ってきて正解だったな。 ――そのときだった。 「あ〜あ。また幸せが逃げちゃいますよ!」 「――えっ?」