朝、並木通りを通って学校に向かう。


特に今日は早めに家を出たからいつもよりもこの道をゆっくりと歩く。


色づいた銀杏の樹が、わたしは好き。


わたしがこの銀杏が映える秋に生まれたからっていうのも、好きの理由の一つである。


名前はさくら。


生まれた季節は秋。


なんで季節じゃない花を、しかも国花の名前をつけたのか、わたしは知らない。


ただの親の気まぐれじゃないのかと思う。


そういう親だから。


適当な親だから。


名前も適当につけたんじゃないかと思う。


そんな今さらどうでもいいことを考えてると、並木の下で佇んでる一人の女の人を見つけた。


それが“彼女”だと気づくのにはそう時間はかからなかった。


あの写真よりも髪が長くなってて、あの写真よりも大人びてて、あの写真よりも存在感があって、まわりの色を消して、彼女だけが色をまとっているような、そんな風に見えた。


あなたがカナさん?
そう尋ねてみたい。


だけどできない。


だって、あまりにも寂しそうに並木を見つめているから。


この並木になにか悲しい思い出があるかのように、今にも泣きそうな表情で、並木を見つめる彼女。


そんな彼女もキレイだと思った。


そんな彼女が先輩とどんな関係なのか、知りたくてたまらなくなった。


あのマグカップの彼女。


先輩の部屋に色を持ち込んだ彼女。


わたしの知らない先輩との時間を重ねた彼女。


彼女のことをもっと知りたい、そう思った。