――――――

空が薄暗くなり始めた頃
家に到着した俺ら。


「おじゃま、します」


何度も来てるはずなのに
いつになく緊張した様子で遠慮する
ケンゴの姿に苦笑い。


「適当に座れよ」

「ああ」


鞄を放り投げて
ベースをベッドの側に立て掛けていると
ケンゴがゆっくりと
フローリングの床に座るのが見えた。


そのままCDラックの前に行き
大量に並ぶCDの中から
ラベルも何もないCDRをケースから出し
コンポにセットする。

ケンゴはその間
一言も言葉を発っさずに
俺の行動をじっと眺めていた。


もとはパソコンの中にあったそのデータ。

だけどこいつには
少しでもいい音で聞いて欲しいって
そう思ったから。


しばしの沈黙の後
スピーカーから流れてきたのは
ノイズまみれのくぐもった歓声と拍手。

そして始まる静かなギターの音。

それはまるで
美しいピアノの旋律のような
水の雫が弾けるような。

そんな音。


俺は息を殺し、ベッドに腰をかけながら
かたく拳を握って力を入れた。


――これを聞くにはいつも心構えがいる。


そうして流れるようなイントロの後
歌が聞こえてきた。