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「歳さん」



穏やか日々。



「ん?」



でも終わりがすぐ来ることを私は知っている。


歳さんは優しく髪を撫でてくれている。


心地いい。



「……沙知」



低い声で囁かれて顔を上げると自然と唇が重なる。


外でも中でも鬼なんて呼ばれているけど。


そうは思えないほど、甘くて優しいキス。



「歳さん…」



抱き締められて。


着物を通して温もりを感じて。


ただ、満たされる。


幸せを感じられる一時。


……でも幕府は近いうちに滅んでしまう。



「沙知?」



頬を撫でられてハッとする。


自分の世界に入ってしまったみたい。



「なんでもないです。…ちょっとだけ、不安だったんです…」



歳さんに心配を掛けたくなくて、精一杯微笑んだ。



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