「ちょっとこっち来て杓してくれよ」

ヒゲ面の徴兵がテーブルに向かってゆうげをとっているウェーブした長い黒髪の女傭兵の腕を引っ張ろうとする。

シャキーン!

女は椅子をけって立ち上がりざまに長剣を引き抜く。

「やるか」

徴兵も剣を引き抜こうとするが、若い男にその手を押さえられた。

「きさま、なんだ?」

「こんなところで切りあいですか?女と切りあってどうするんです?勝っても負けてもいい笑いものですよ」

ヒゲ面の男は腕をふりほどいて、フンと鼻を鳴らして、酒場を出て行く。

「大丈夫ですか?」

長い黒髪を紐でくくっている若い男は、銀色の星形のある柄に剣をしまった女に声をかける。

「切りあいなら負けない」

「酒場で切りあってもなんの特になりませんよ。…ローズ姫」

「な、なんでそれを?」

「(小言で)ここじゃ、人の耳に入る。私の部屋に行こう」

ローズは男の真剣な切れ長の黒い瞳にうながされるようについていく。