「畜生、なんで俺ばっかりこんな目に遭うんだ」

油川彦麻呂は、すり鉢をゴリゴリとすりながら、一人ぶつぶつと銘湯(めいとう)寮の自室で文句を足れていた。

油川彦麻呂、身長190センチ、体重は110キログラム。

本人も何故だか分からないが、頬は常にほんのり赤い。兄と妹がおり、兄は警察官だが昔は大学院でシステムの研究していたそうな。

妹は不動産屋で、どちらも下関市内に住んでおり、二人とも背が高く、自慢の兄弟だった。

人はこの豪傑のことを、様々な物や人、主に相撲取り等に例えて楽しんでいた。

どれだけ小ばかにされようとも、彼は

「だれが朝青龍だよ。」

と突っ込みを軽く入れるだけで、決して怒って反撃することは無かった。

それで周囲の人間は益々面白がり、彼に対して様々な言葉を投げかける。

それでも彼は憤慨しないのだが、決して心が広いが故にそうしているのでは無く、単に面倒くさがり屋で、いちいち反応するのが面倒だったに過ぎないのであった。

しかし、ここのところ彼はすっかりストレスを溜めこんでいた。

彼はシステム資源掘削グループの陸隊に見事選ばれていたのだが、3週間経っても全く成果を挙げられないでいた。

そこに漬け込んで彼よりも成績の良い同グループの者が彼のことを毎日ちゃかしていたのである。

彼を馬鹿にしている者達も決して成績が良いわけではなく、陸隊のノルマには程遠く、全員で頑張ったところでレジスターが20個、BALが10個、35トラック、11ブロックしか成果を挙げられないでいた。

陸隊とは石井副調査役率いる一団であり、下関で一番高い華山の頂上付近で各々が穴を掘ってシステム資源を掘削するという手段を選んでいたのである。

「みんな俺のことを小ばかにしやがって。誰が相撲取りだ、誰が、巨神兵だ・・・俺は人間だ。俺は皆のためにこんなに毎日頑張っているじゃあないか。ただ単に今は結果が出ていないだけだ。今に見ておれ、莫大な量のシステム資源を掘り当ててやる。」

かれのすり鉢をする手に力が入る。ゴリゴリゴリ・・・


そこへ彼の部屋の入り口をノックする者がある。