先輩は駅の少し手前であたしを下ろしてくれた。


「ゴメンね。ソラの顔見たら殴っちゃいそうだから、ここまでいい?」


別れ際、先輩は笑っていた。

涙でぐちゃぐちゃなったあたしのひどい顔を見たあとでは、そうするしかなかったのかも知れないけど……。


「落ち着いたらメールでも電話でも……一言でいいから、元気にやってるって教えてくれる?」

「はい……」

「よし。だったらもうソラの所に行って。あまり泣いてると、俺と別れるのが寂しいのかなって勘違いするよ?」


先輩は、最後まで優しくて。


「美夕ちゃん、元気で」



最後に握手をしたその手の温もりを、

先輩があたしに与えてくれたすべての優しさを、


あたしは一生、何があっても忘れないって心に誓いながら、


先輩に背を向けた。