2階から、ソラの声が聞こえてくる。

「キラ、どこだ!? 返事をしろ!」

ソラは自分たちの部屋を飛び出すと、次に隣の部屋へ移動したみたいで。

入り口のドア、部屋の中のバスの扉、クローゼット……

それらを次々に乱暴に開け閉めする音が、階段を伝って下まで響いてきた。



あたしは玄関に佇んだまま、その音をじっと聞いていた。



さっきまで、あんなにしっかりと手を繋いでくれていたのに。

あたしのすぐ隣に、確かにソラの温もりを感じていたのに。

そんな後だから余計に、ソラのいなくなった空間が寂しかった。


──だけど。

今はそれよりもキラのことだ。


そう思って気持ちを切り替えようとするけれど、あたしの頭は、キラのことを考えることを拒否しているような気がした。


だって、あたしが最後に見たキラは、自分の体に刃を向けていて……。

あれが単なる悪ふざけだったなんて思えない……。


──ダメだ。
どうしても、悪い方向に考えてしまう……。