部屋の鍵を開けると、先輩はあたしを先に部屋の中へ通してくれた。


少しためらいながらもあたしが数歩進むと、後ろから

「ドアは開けておくよ」

っていう先輩の声。


その声に振り返ってみると、先輩は入り口に屈みこんで、開けたままのドアが動いて閉まらないように、ドアストッパーで固定してくれているところだった。


「だから安心して。ほら、早くあっちに行って座ろう?」

先輩はあたしの肩を抱くと、奥へ進み、あたしを片側のベッドに座らせてくれた。

そして自分は、もうひとつのベッドに、あたしに向き合うように座る。


「キラちゃんと何かあったんだよね? ……俺には言えないこと?」


膝の上に肘をついて。
あたしの顔を覗き込みながら。

先輩はどこまでも優しかった。


「何もない、なんてウソついてもバレてるからね。美夕ちゃんのこと、こう見えてもよく分かってるつもりなんだから」


先輩は一呼吸置いて、続けた。


「──ソラのことだよね?」


『ソラ』って言う言葉を聞いただけで、あたしの肩がびくっと震える。


どうしよう……。


だけど先輩には隠し通せる気がしなくて、
ううん、隠しちゃいけない気がして、


あたしは黙ってうなずいた。