──一体、何が起こったんだろう?






いきなりのソラの抱擁。

驚きのあまり、あたしの涙は次第に引いていった。






「ソラ……?」


「ごめん、もう少しだけ、このまま……」


ソラは苦しそうにそう言うと、あたしを抱きしめる腕にいっそう力を加えた。





さっきまでの冷たい横顔からは想像できない、ソラの優しい声。

本来のソラは、いつだって、こんな風に優しかったはずだ。


……だけど、もう、そんなことすら忘れてしまっていた。

それくらい、最近のソラは、ずっとずっと冷たくて。

遠くて……。




ソラの腕の中で、あたしはどうしていいか分からずにいた。

戸惑いが邪魔をして、だらんと垂らしたままソラの背中に回すことのできない両手。

優しく後頭部を支えられ、ソラの胸に顔を埋めながら、あたしはソラの心臓の音を聞いていた。

トクン、トクン、と速いペースでソラの心臓が動くのが、はっきり頬に伝わってくる……。



一度だけ入り口のドアをガチャガチャと開けようとする音がしたけれど、それもすぐに沈黙に変わった。



そして、そのまま時間だけが過ぎていった。