旅行を前日に控えた夜、あたしは荷造りをしながら今までに感じたことのない緊張感に襲われていた。


……だって。

明日、あたしは先輩と同じ部屋に泊まるんだよね?

2人っきりなんだよね?


カバンの奥底にキラが選んでくれた新品の下着を詰め込んでいると、そんなドキドキはいっそう激しくなる。


その時、

「美夕、準備ができたら早くお風呂に入ってー」

ママがノックもせずにあたしの部屋に入ってきた。

「やだっ! 勝手に入って来ないでよ!」


思わずカバンを背中に隠すあたし。

なんかこれじゃ、悪いことしに行くみたいだ……。



当たり前かもしれないけれど、旅行の話をしたとき、ママには大反対された。

「子供だけで旅行だなんて!」


ママってば、あたしたちのこと、いつまでたっても子供扱いするんだから。


だけど、行き先が小学校の頃からよく知っているキラの家のペンションで、
そこにはちゃんと管理人さんがいて食事などの身の回りの世話をしてくれるというのを聞くと、しぶしぶ了解してくれた。


「絶対に迷惑かけないようにね」


──ママの言う迷惑って、何?

そう思ったけど、やっぱり聞くのはやめた。