――――――……
――――……




「要、 大丈夫?」



肩越しに覗き込んで来た未央は、そう言うと少しだけ含み笑いをする。

心配の言葉を口にしても、その目はしてないだろっ!

どー見ても、顔が笑いを堪えてるじゃん。


俺はジロリと一瞬だけ視線を合わせ、また前を向く。


……くそ。


頬についた引っかき傷にそっと触れる。



大丈夫なわけないだろ……




痛いっつの!







――――――……
――――……




見つめあったまま、密着する身体。

前髪の触れる距離。

お互いの心音が聞こえる距離。


そして。


未央の涙で、怯んだ俺。





妙な沈黙。


普通なら、きっと心地よい瞬間なんだけど
今の俺らにはそんなのどうでもよくて。


なぜか

今まで未央の髪や頬、耳元を愛撫していた俺の右手は
行き場をなくして固まる。



なんだ?
この気まずい空気。


……って、もしかしたら。
そう感じているのは俺だけかもしれないけど、それ以上先に進めなくなる。



ここまで来て。