気持ちいいな……


ふわふわして……


なんだろう、この感じは。


何かが頬をかすめる。





太陽の陽射しを手で遮りながら、俺は顔を上げた。

木漏れ日の中、まるで光がダンスしているように俺の顔を照らす。


その隙間から、降り注ぐのはピンクの花びら。



『桜……』



そうだ。

これは“あの”桜の木だ。



懐かしいな……子供の頃の思い出の場所。

……特別な場所だ。





ピンクの小さな欠片が俺を包む。

目を細めたまま視線を戻すと、そこにはキミがいた。



満面の笑みで、俺を見つめるキミ。

高い位置で結ばれた、やわらかそうな髪が風に乗ってフワフワ揺れる。

掴み所のないその髪に触れたくて手を伸ばす。

そして、キミの唇が何かを言っている。




なんだ?


聞こえない、もっとはっきり言ってよ。





『あたし、二十番目ならお嫁さんにならない』






その声が届いた瞬間――――……




まるで映画のスクリーンのように、フェードアウトしていく。


みるみる遠ざかるキミの姿。



ちょ……

ちょっと待てよ!



二十番目なんかじゃないッ!



俺は……


俺は……ちゃんとお前だけだからッ!