キィと、急ブレーキの音が響くと猫が走り去った。
慌てて発車する自動車。


 歳の割りに、白髪の少ない煙草屋の婆さんの愛猫はどうやら助かったようだ。


 猫と車の絡みがあった細い路地の交差点から南へ直進した公園では、今まさに有り得ない事でも無い事が起ころうとしていた。



 時期で言えば、冬だろうか?ただ雪が降っていると言う事が判断材料であって、冬では無いのかも知れない…。


 その証拠に、うっすら雪化粧をした園道の脇に植林された桜は、薄いピンクや白い花を咲かせ、満開である。



 ピリピリと周りを痺れさせる、大気の振るえが起きると、微かに空間に穴が開いた。


 そこから急激に穴は大きくなり2秒程度瞬くと、ゴーグルと白い戦闘服を着た人物を残し、穴は消えた。



 街のあちこちで逃げ惑う人々の喧騒が聞こえる。非常事態が起きている事が容易に判断出来た。



 白い戦闘服を着た人物は立ち上がると、腕に付けた機械に情報を入力した。



 園道の先では、半袖姿の老人が重い足取りで歩いていた。


 体格も良く、昔は第一線で働いてきたであろう老人は額の汗をハンカチで拭うと、また歩き始めた。


 園道には、老人の2つの足跡がはっきりと公園の外から続いていた。



 人物は、情報を入力し終わると意を決したように走りだした。


 老人を尻目に、人物は駆けて行く。白い戦闘服のおかげであろうか、常人では到底出せない速さで駆けて行く。



 白い人物は、遣わされた。
それは誰の意思で、男なのか女なのか人間なのかさえ怪しい。
ただ非常事態をより良い方向へと導く為に、此処へと現れた。




 3日前より続いた余震は、今は収束している。
空は薄曇り、風は生温い。


 街が混乱している中、この公園だけは平穏だった。
人物が現れる為にこの公園が選ばれたのは最良の選択であった。


 過ぎ去る人物、白い雪、地震、そして薄曇り。


 これから語られる物語を記して行く前に、人物が現れる3日前の出来事を話さなければならないだろう。


 この非常事態の事の発端を…






(つづきません。笑)